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執筆者の写真健太郎 立花

持続可能な和紙文化と振興

皆さん、こんにちは。

日本の和紙文化は千年以上の歴史を持ち、その独特な美しさと機能性で世界中に知られていますが、現代の大量生産・大量消費社会の中で、その伝統が悲しくも失われつつあります。

持続可能な和紙文化の振興は、地域経済の活性化や環境保護にもつながる重要な課題。

今回は持続可能な和紙文化の意義と、その振興に向けた具体的な取り組み・可能性について考察します。


和紙の歴史と特徴

和紙は植物繊維【楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)など】を用いて作られる伝統的な紙です。その起源は奈良時代にまで遡り、日本の文化や芸術、生活に深く根ざしてきました。

出典元:Canon Creative Park


薄くて軽くて丈夫、その上に美しい風合いを持つことが特徴で、通気性や吸湿性に優れ、保存性も高いため、書道や絵画、工芸品、日用品など様々な用途に用いられています。

以下のように、楮(コウゾ)の繊維が幾重にも折り重なっているのがお分かりいただけるかと思います。

出典元:Canon Creative Park


今回、とある会合でご縁をいただいた手漉き和紙職人・林伸次さんから、和紙の原料となる楮(コウゾ)の表皮を見せていただく機会を得ました。


手間暇かけてつくられた楮(コウゾ)の繊維。

↓ ↓ ↓


この白皮を煮てアク抜きをし、機械で砕き細かい繊維に。

ネリ(サナ)と呼ばれる粘性のある植物由来の成分を水に溶かし入れると、和紙製造の原料となります。


二種類のサンプルの和紙。

使用する植物繊維、製法や配合によって様々表情を見せます。


現代の和紙産業の現状

近年、和紙産業は深刻な課題に直面しています。大量生産による安価な洋紙の普及や和紙職人の高齢化と後継者不足が影響し、伝統技術の継承が危ぶまれています。

また、環境問題も見過ごせません。

和紙の原料となる植物の栽培や製造過程における水資源の利用には、持続可能な手法が求められています。


【黒谷和紙】(京都府指定無形文化財)

京都府北部中丹地域にある綾部市黒谷町。

府下の紙漉きの産地の中で唯一、複数戸の紙漉きが今なお手漉きに拘り生産。

協同組合が生産・販売を管理している稀有な産地となっています。


持続可能な和紙文化の意義

持続可能な和紙文化の振興は、以下の点で重要です。

1.文化遺産の保護と継承
  和紙は日本の文化遺産として重要な役割を果たしており、その技術や知識を次世代に
  継承することは、文化的な豊かさを保つために必要。
2.地域経済の活性化
  和紙の生産は地域の特産品として経済的な価値を生み出し、光や特産品の販売を通じ
  て地域経済の活性化にも寄与。
3.環境保護
  持続可能な農業や製造方法を採用することで環境への負荷を軽減し、生態系の保護に
  もつながる。

具体的な取り組み

その上で、持続可能な和紙文化の振興をいかに果たすか・・・ 私なりに言語化してみます。


  • 教育と普及活動

  和紙の歴史や製造技術を学ぶ機会を提供することで、次世代にその価値を伝えます。学

  校や地域コミュニティでのワークショップや展示会の開催は、ありふれたフォーマット

  ではありますが、多くのステークホルダーに参画いただく意味でも効果的と考えます。


  • 技術の継承と革新

  和紙職人の技能を保存・伝承するための支援を行うとともに、現代のニーズを捉えた新

  しい製品開発を促進します。例えば、和紙を使ったファッションアイテムやインテリア

  製品の開発など。特に和紙の耐久性や軽量性を活かした製品は、現代のライフスタイル

  にマッチするのではないでしょうか。


  • 環境に優しい製造プロセスの採用

  和紙の製造過程での水資源やエネルギーの利用を見直し、持続可能な方法を採用するこ

  とが求められていることは先にも述べました。

  再生可能エネルギーの活用や、環境負荷の少ない素材の選定を考慮する必要がありま

  す。例えば、地元で生産さえた有機栽培の原材料を使用することで、地球環境への影響

  を最小限に抑えることができます。


  • 国際的なプロモーション

  和紙の美しさと機能性を国際市場でPRすることで、海外からの需要を喚起します。こ

  れにより、国内市場の拡大とともに和紙文化の国際的な認知度向上が期待でき、伝統技

  術の素晴らしさを訴求することができます。

  海外のアートフェスやデザインイベントに出展、政府系キーマンに対するロビー活動な

  ど、和紙製品の魅力を世界に発信することが重要です。


文化体験プログラム:和紙を用いた水墨画

和紙文化の振興に向けた取り組みの一環として、和紙を用いた文化体験プログラムの導入が考えられます。特に水墨画をテーマにしたプログラムは、和紙の美しさを最大限に引き出すことができ、参加者は深い感動とともに新たな発見を得られるでしょう。

水墨画は、中国から伝わった絵画技法であり、日本では鎌倉時代から発展しました。墨の濃淡や筆使いによって自然や動物、風景を表現する水墨画ですが、伊藤若冲や長沢芦雪に代表される日本画家で馴染みがある方も多いはずです。

私自身、水墨画にはじめて触れ、墨の一筆一筆に宿る自然美やその濃淡によって生まれる生命力に感動を覚えました。

このようなプログラムを通して、文化的豊かさを育むとともに、第二の若冲を目指すのも良いかもしれません。


ソーシャルグッド

利便性や効率が何よりも優先される世の中にあって、私たちにできることは何なのか。

持続可能な和紙文化の振興は、日本の伝統文化を守り、未来に引き継ぐために欠かせない課題と捉えています。

微力ではありますが、和紙の持つ独自の美しさや機能性を再評価し、現代社会においてその価値を高めていくこともまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。

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