皆さん、こんにちは。
弊社が参画するサーキュラーパートナーズ(経済産業省)のワーキンググループがいよいよ始動します。
サーキュラーエコノミー(以下:CE)は、私たちが活動する上での基軸であり、かつてない“文化財×CE”にもとづく付加価値の創造、地域再生を成し遂げるための常套句と言っても過言ではありません。
※サーキュラーパートナーズ
CEに野心的・先進的に取り組む、国、自治体、大学、企業・業界団体及び関係機関・関係団体等が一体となり、日本におけるCEの実現に必要な施策等の検討を行うことを目的とした産学官連携組織。
今回は、国をあげて取り組もうとしている循環システムの基本をおさえてもらうべく、表題の旨書き連ねます。
サーキュラーエコノミーとは
ここ数年、特に欧州諸国の先進事例にスポットを当て、新しい経済発展のモデルとして注目されるCE。
気候変動、資源の枯渇、エネルギーの過剰消費・・・
人類が行ってきた経済活動・消費活動が環境に及ぼす影響は様々な社会問題を生み出し、その解決には全世界・全人類が一体となり協力することが求められています。
CEは、大量消費社会が抱える様々な問題を改善し、経済的な付加価値を創出する画期的なコンセプトと位置付けられ、ナショナルカンパニーのみならずローカルに根付く中小企業までもが、それに少しでも近づけるよう日々企業努力を行っています。
CEとは「資源の循環を前提とする経済」を指します。
環境省の定義によると、従来は廃棄物になっていたものを材料として再利用し、資源を循環させることで資源消費や廃棄物の発生を抑えることを示す経済システムのこと。
「循環経済」「循環型経済」とも呼ばれます。
CEの3原則
CE推進団体であるエレン・マッカーサー財団は、CEの3原則として以下を掲げています。
これまで世の中が我が物顔で行っていた大量生産・大量消費。
これをリニアエコノミー(線型経済)と言います。
産業革命に端を発し、少なくともこの経済活動により人類は多くの恩恵を受けてきたのは事実。
その代償は、環境汚染、生態系の破壊など、多くの社会問題を抱えることになってしまったことは言うまでもありません。
CEは、限りある環境資源を有効活用し、地球全体の持続可能な経済発展の基盤となる新しい考え方なのです。
サーキュラーエコノミーによるビジネスの可能性
では、CEによってビジネスにはどのような影響があるのでしょう?
アクセンチュア(株)の調査報告によると、2030年には世界におけるCEの経済効果は約540兆円にのぼると見られ、大きな価値が生み出されることが予想されています。
日本国内におけるCE関連市場は80兆円との試算。
関連市場拡大の観点から、原材料やエネルギーの回収、遊休資産のレンタルに代表されるシェアリングエコノミーなどが台頭する中、これらの新市場に事業を横展開したり、投資したりする企業が目立ちはじめています。
モノやサービスが変化すれば、消費者の価値観にも変化が起こります。
従来の価値観であれば、新品の製品を購入したり、自ら所有することに価値があるとされていました。
しかし、CEをはじめとするグローバルな環境への配慮が推進されるようになり、人はモノの購入や所有よりも「体験」に価値観をシフト。
例えば、遊休資産である自動車を利用したカーシェアが良い例です。
マイカーを所有するよりも車に乗る体験の価値を重視し、必要に応じて車を使用する方が経済的かつ合理的だと考える消費者は、今後ますます増えていくと言われています。
海外の先進事例
特に、環境先進国として知られるオランダは、CE分野でも先進的な取り組みを数多く行っているとし注目を集め、世界をリードする国としての存在感を強めています。
そんなオランダの企業の取り組みを3つご紹介します。
分解して再利用できる未来型建築 -CIRCL-
オランダのメガバンクのひとつである「ABN AMRO」が設立した複合施設。
廃棄予定だった食品を使ったレストランやバー、サスティナブルな製品を取り扱うセレクトショップ、一見するとスタイリッシュ&モダンな建築ですが、竣工前から取り壊されることを前提としており、解体後には約90%もの資材が再利用可能に設計されています。
例えば、木製の床は古い修道院で使われていたものであったり、他企業のオフィスが解体された際に引き取った家具や窓枠などをふんだんに使用。
敷地内にはCEの取り組みのヒントになるアイデアがたくさん詰まっています。
出典元:ABN AMRO公式HPより
自分で修理可能なスマホ -Fair Phone-
毎年のように新作モデルが発売されるスマホ。
もし自身で消耗したバッテリーや割れた画面を交換でき、最新のカメラも簡単に付け替えられるとしたら、新しいスマホを買い替える必要があるでしょうか。
Fair Phoneはユーザー自身がパーツの交換・修理を行うことで約10年間使用できるよう設計せれています。シンプルな設計であることはもちろんですが、分解の手順が本体の部品にも書かれており、専門知識がなくとも簡単に分解・修理可能。
さらに、原材料や生産過程においてサスティナビリティを追求しており、原料にフェアトレード認証ゴールドを使用しているほか、コンフリクト・フリー(紛争の資金源とならない)のスズやタングステン、リサイクルされたプラスチックや銅を使用しています。
また、使用しなくなった本体や部品は返却可能で、ユーザーにキャッシュバックされるため、実質的に製品はすべて企業のもとに。返却された製品は多くの部品や素材がそのまま別の製品に再利用できるため、ほとんど廃棄が出ないもの特徴です。
出典元:Fair Phone公式HPより
ジーンズのサブスク -MUD jeans-
ジーンズ業界で初めてサブスクを採用し、ジーンズを回収しリサイクルを行うことでCEの実現に取り組んでいるアムステルダム発の企業です。
月額7.5ユーロでリース、一年のリース期間が終了するとユーザーは交換・買取のどちらかを選択可能。
回収したジーンズは繊維に裁断され、新しいジーンズの素材として再利用されます。これにより、なるべく新しいコットンを使用しない循環サイクルを確立しています。
その他、労働環境の整備に注力、サスティナビリティへの投資などを積極的に行うことで、ユーザーの信頼獲得とブランディングにも成功しています。
出典元:MUD jeans公式HPより
ジブンゴトとして
このように、CEによる経済活動は様々なメリットをもたらせ、新たな未来を創る上で必要不可欠な社会システムであることの一端をおわかりいただけたかと思います。
環境問題に起因する世の中のトレンドから、皆さんはCEに対して義務感のようなものを抱いていらっしゃるかもしれません。
私は文化財の管理運営者として、自然とサスティナビリティのど真ん中を歩んでいます。
何の違和感もなく。
故に、義務感よりも使命感が勝っており、CEに対して小難しさを感じることなく、楽しみながら活動に取り組むことができているのではないか、そのように感じています。
資源の循環による廃棄物の抑制と経済価値の創出を目指すCEへの転換によって、関連市場の拡大や消費者の価値変容など、様々な変化が起こることに対する皆さんのご理解に加え、これをジブンゴトとして捉え、社会変革に向け立ち上がる志士の連鎖を願うばかりです。
ソーシャルグッド
CEの実態を知り、その可能性を捉える。
さらには、オランダの先進事例にヒントを得、持続可能で経済的にも社会的にも価値ある事業展開を目指していくことの正当性、合理性を声高に訴えることもまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。
では。
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