皆さん、こんにちは。
二回にわたり、プロジェクトの概要をお伝えしました。
今回は、文化財である「柳川藩主立花邸 御花」を実装の舞台とし、そのリアルな活動内容に加え、地域循環のあり方あるべき姿についてお話しします。
私たちの統一言語のひとつ、Fellow Act。
科学的根拠にもとづく専門的知見の習得とそれを体現する実践型フィールドワークです。
仲間と共に文化財を自分事化するため、シビックプライドを醸成させるための具体的アクションとも言えるFellow Actのスタートです。
座学
10月2日(月)。
1stステップの位置づけで、SAMURAI REBIRTHのアドバイザー/鴨志田純氏による座学を開催しました。
地域循環という公共性の高い営みでもあるため、コアメンバーに加え自治体職員の方々(都市計画・文化財保護領域)にも参加いただき、幅広い観点での地域課題を踏まえた自由で建設的な議論。
堆肥および堆肥化に関する専門知識はもちろん、その活動によるあらゆるメリットを具体的にイメージすることができました。
学びの領域は、法律から化学、自然環境にまでおよび、ひとつの学問にとどまらないリベラルアーツのようにも思えます。
出典元:神奈川県 堆肥などの品質表示について
堆肥づくりには、炭素(C)、窒素(N)、微生物(B)、ミネラル(M)が主たる資源となります。
CNBMは土に還る成分、という裏付け。
特にC/N比(炭素と窒素の比率)によって、発酵状態が大きく異なり、養分のバランスや品質に影響を及ぼします。
座学を経て、身の回りにあるものをCNBMで切ってしまう奇特な習性を身につけることができました。
有機物の堆肥化の過程では、微生物の分解活動による発酵温度(60℃以上)によって、病原菌・寄生虫・雑種種子などが死滅することがわかっています。
ゆっくりと時間をかけ完熟堆肥を目指します。
※一般に堆肥は「中熟後半」が生物的、物理的、化学的に見ても効果的と言われていますが、腐敗せず安定しており、その上で作業性に優れているのが完熟堆肥です。
出典元:「堆肥のつくり方使い方」農文協/藤原俊六郎著
フィールドワーク
10月3日(火)。
座学を経て、実際に手を動かしていきます。
プロジェクトの核でもある畳をバラす作業から。
大きな畳おもてを細切れにし、さきイカを割くように・・・
すると、面白いほどスルスルはがれていき、一本の細いイ草で成り立っていることが実感できます。
これは子どもでも楽しみながらできる作業で、まさに青少年育成事業にはうってつけの体験コンテンツだと、メンバー同士盛り上がりました。
その他、「柳川藩主立花邸 御花」の敷地内で日常的な清掃対象となる枯れ葉。
落葉広葉樹です。
域内で無償確保可能なもみ殻、米ぬか、鶏ふん、そして赤土。
地場のJA、米卸、養鶏場など、色々な方のご理解ご協力のもと資源確保につながり、
共感の輪、win-winの関係性を実感しました。
皆さまにはこの場をお借りしてお礼申し上げます。
確保した資源を「CNBM分類」すると、以下のようになります。
フィールドワーク
10月4日(水)。
いよいよ仕込み作業です。
良質で選りすぐられた食材を下処理し、火入れをするかのような心躍る瞬間。
鴨志田さん監修によるCNBMレシピをもとに、堆肥舎で混ぜ合わせていきます。
※堆肥舎:「柳川藩主立花邸 御花」内で遊休していた小屋を活用。
撹拌作業はかなりの重労働ではありますが、資源の生命力としたたかさを感じつつ、自然環境の尊さに感謝するばかりでした。
大袈裟に思えるくらい、心が豊かになる時間です。
布団(PP製カーペット)をかけ、オーバーナイトさせます。
我が子を寝付かせるような感覚。
そして翌日。
発酵が進み、堆肥の温度が52.0℃まで上昇していました。
これは感動もの。
病原菌・寄生虫・雑種種子の死滅温度、60℃をめざします。
10月7日(土)。
なんと驚きの59.6℃。
布団(PP製カーペット)をめくると湯気が上がり、堆肥の表面には見事な放線菌が生えています。
ソーシャルグッド
域内で廃材化となる資材、行き場を失った資材、その過程には多くの地域の方々が関わる中で経済活動が成立し、地域一体に様々な影響を及ぼしていると考えさせられました。
微力ではありますが、私たちの活動により資源の好循環を生み、あらたな好資源を創造することで地域は再生され、人の心は豊かになるものと信じています。
この堆肥化は、約半年をかけて完熟させる愚直な作業となります。
その過程において、共感者の方々には堆肥に触れ、文化財を考えていただけるような場を設けていければと考えています。
繰り返しになりますが、この考え方を「文化財の自分事化」と呼んでいます。
「文化財×循環経済」を地でいく私たちの活動は、あらためてソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。
では。
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